院長挨拶 2024/11/01
医師/医学博士 肥後 友彰
皆様こんにちは。
このたびはくとホームケアクリニックは2024年6月に無事開業一周年を迎えました。この一年間で250名近くの訪問診療患者様をご紹介頂き、日々忙しく患者様のお宅を回らせて頂いています。クリニック開業動機のひとつであった「豊中市中南部の訪問診療医不足の解消」に少しはお役に立てているのではないかと自負しています。一方、開業一年で我々が目指すものとそこへ至るまでの課題も見えて来ました。
外来・訪問診療ともに複数の病気を抱えている患者さまの診療がとても多く、我々の専門である心臓・血管の病気の他に呼吸器の病気、認知症、糖尿病、腎臓病、骨粗しょう症、腰痛症、関節症、皮膚疾患、褥瘡(床ずれ)など診療の範囲は多岐に渡っています。複数の慢性疾患を抱えた状態はMultimorbidity(マルチモービディティ)と呼ばれ、超高齢化が進む日本の地域医療はこうした多疾患患者さんで溢れ返っている、ということを改めて実感しています。
一方で、多疾患患者さんをどのように診療すれば良いのか?という答えは世界的にも見付かっていないのが現状です。いくつもの病院、あるいはひとつの病院の中でもいくつもの科に受診している。病院受診のためのタクシー代も馬鹿にならない。また、10種類以上のお薬をもらっているが、毎日毎食後きちんとお薬が飲めないのでお薬が余って来ている。でも先生には怖くて言えない。この30-40年病気の診断・治療法が劇的に進歩した光の影としてこういった問題が生じて来ていますが、こうした影は病院の先生方や最先端の研究者からは見えにくく、未だ解決の入り口にも立っていないように思います。
当クリニックが最も力を注いでいるのがこうした多疾患患者さんの診療です。専門の循環器疾患だけでなくその他の疾患にも幅広く対応出来るよう、ドクターは日々医療知識・技術の研鑽を積んでいます。ケアマネージャーさん・訪問看護師さん・薬剤師さん等と連携して、ただお薬を処方するだけでなくそのお薬が患者さんの口に入るまでの「ラストワンマイル」を考えてサポートを行なう。さらに服薬だけでなく自宅内での移動・食事・入浴・排泄といった介護面も意識した治療・連携を行う。こうした連携は医療知識のトレーニングを受けた当院看護師の仕事です。また、事務スタッフはこうした診療のサポートや、患者さま・ご家族さまの費用・制度面での疑問や不安を解消する相談を行なっています。
あまりに対応すべきことが多すぎて目をつぶろうとすればいくらでもつぶれますが、「細かいことに妥協せず出来る限り対応する」ということを全てのレベルで取り組んでいます。また、ただ目の前のことに取り組むだけでなく大阪大学医学部保健学科や地域の訪問看護ステーション・薬局とこうした実地医療に関する共同研究を行っており、多疾患診療のエビデンスをここ豊中の地から世界に発信することを目指しています。
はくと=白兎の名付け親である息子は小学6年生になり、ラグビーの全国大会であるヒーローズカップを目指してチームメイトと切磋琢磨する日々です。私自身もコーチをさせて頂いており、週末はほとんどをグラウンドで過ごしています。趣味のランニングとスキーは今年度はお預けです。ラグビーは社会の縮図、と良く言われますが正に地域医療はラグビーそのものです。患者さまに関わるひとりひとりが個人の責任を果たしつつ、誰かが困っていれば皆んなで助ける。
”One for all, all for one.”の精神でこれからも真摯に診療に取り組む所存です。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
令和6年11月1日
はくとホームケアクリニック
院長 肥後友彰